ある幹部の左遷の話 その27
2007年 11月 21日
OさんとS次長は、担当営業のNと3人で客先に説明に行くことになった。その前に工程改ざんのことは一切言わないように示し合わせた。これが発覚すると、補償問題に発展しかねないからだ。その賠償はとんでもない金額になってしまう可能性が大きい。
当初Oさんは、客先に工程改ざんを正直に話すつもりでいたようだ。しかし、それは社内の高級幹部たちに反対され却下されていた。それも理解できることだ。正直に話したら、補償問題・信用問題、その他どんな問題が発生するか分からなかったからだ。
3人は客先で示し合わせた理由を説明し、客先の倉庫に在庫してあった納入済みの製品の全量を回収し、ひとつひとつ確認作業をするということを約束し会社に帰ってきた。
とは言え、後はどうやって確認作業をするかどうかを考えなくてはならなかった。結局、ひとつひとつを人間の手で慎重に時間をかけて行う以外に方法は無かった。手で触ると問題のある製品は、すぐに分かったことが不幸中の幸いだった。
数千個の製品が戻され、全量が直ちに再検査された。そして、問題が出た製品は全て造り直し、再出荷されたのだ。客先とは大きな問題にならなかったのは、工程改ざんを隠し続けたからだ。つまり嘘を貫き通したことだ。
社長は問題が発覚したときに、「補償問題が発生すれば全財産を投げ打ってでも客先や最終エンドユーザーに全額補償する」と言っていた。それがどのような意味なのかは、幹部全員やこの仕事に係わってきた小生たちにとって理解できた。